よい本だった。
本は人を現わし、文は人を現わす。与謝野氏の初めての著作となる本書は、氏の人となりを余すところなく伝えている。いま70才でなければ、充分総理大臣が務まると思う。
わたしは、著書によってかなりの部分人を評価するが、その後の結末について、けっこうの精度で予想できていると思っている。(ちなみに、小泉元首相については、総理になる10年前に本を読んで、高い評価をしていた)
これに対して、安倍元首相が就任前に著書を著したとき、一読して「何書いているか、まったく伝わらん」と思った。当時、世の中は安倍フィーバーに湧いていたが、著書を読んで以降、評価を著しく下げた。さらに、初めの組閣名簿を見て、評価は最低ランクに落ちた。
ところで、著書に関する本題に話題を戻すため、印象に残った一節を挙げてみた。
●人に相談すると平均的な答えしか返ってこない
「私の先輩たちは、肝心なときに人に相談して判断を間違ってきた。私は肝心なとき、絶対に人に相談しない。自分で決める」(小泉元首相)
●国家は割り勘である
みんなでちゃんと「割り勘」分を払わなければ、本当にこの国は支えられない。
「割り勘」の議論については、同感の部分が多い。4月以降、後期高齢者保険制度や揮発油税の暫定税率の議論がやかましいが、「いったい、だれが負担するのか」という視点が抜け落ちてしまっているような気がする。
後期高齢者保険制度については、老人1人あたり、年間80万円(!)の医療費が費やされており、保険による不足分は現役労働者の保険料や税金によって穴埋めされている事実を避けることはできないし、揮発油税についても、限られた公共空間に個人が巨大なハコを占有する対価として、諸外国なみの「一般税」「環境税」は、しかるべき負担である。
ある程度は減税したとしても、ある程度は負担したうえで、医療費や道路建設費などの支出の効率化を目指すべきだと考える。
また、与謝野氏は、福祉特定財源として、消費税10%への増税を唱えている。2015年において、消費税を10%に増税すると、増加する社会保障財源はまかなえる計算だという。
わたしは、その論には反対だ。中央集権に伴う巨大なムダ使いの構造を温存し、二重行政、三重行政の構造を温存したまま、大規模な増税に踏み切ることは、いけない。
瑣末なムダをあげつらうのは建設的ではないが、根本の行政システムの構造を簡素化されるべきだ。(たとえば、所得税をなくして消費税に一本化すると、所得税にかかわる税務職員は、すべて要らなくなる)
この本を読んで、私の考えとは若干異なる点もあるが、増税など耳の痛い点に踏み込み、率直に書いた点などについては、高く評価できると思った。